税制改革からタレント戦略へ。
高市早苗氏の政策転換が金融人材採用をどう変えるのか。
高市早苗氏のもとで進む日本の政策方針の変化――財政拡張、防衛投資、そして段階的な金利正常化を組み合わせたアプローチは、金融サービス業界における採用動向を再形成しつつあります。過去10年余り、日本の銀行・証券業界の労働市場は、超低金利、限定的な市場変動、そして慎重なバランスシート運営によって特徴づけられてきました。それにより採用は段階的かつ効率重視で進められてきました。しかし、より積極的な財政・安全保障政策は、マクロ経済感応度の高まり、国債発行の増加、分野特化型の資金フローの活性化を通じて、求められるスキルも変化しダイナミックな採用動向を生み出しつつあります。
投資銀行部門では、防衛、インフラ、サイバーセキュリティや先端製造業といった戦略産業への支出拡大が、資本市場活動を刺激する可能性があります。銀行は、準ソブリン案件や産業関連の起債に対応できるセクターカバレッジ担当バンカー、プロジェクトファイナンス専門家、デット・キャピタル・マーケッツ(DCM)の人材を選択的に採用する可能性が高いでしょう。特に、豊富なトランザクション経験を持つアソシエイトやVPクラスの中堅実務人材は、案件がより専門化・政策連動型になる中で、最も需要が高まる層と見られます。
金利・トレーディング部門では、財政支出拡大に伴う国債発行増加やイールドカーブのスティープ化が市場ボラティリティを高め、日本国債(JGB)トレーダー、金利ストラテジスト、デリバティブ組成の専門家への需要を押し上げる可能性があります。顧客がヘッジ手段を求める中、長年にわたり効率化を進めてきたトレーディングデスクの一部は、顧客取引の増加を取り込むため、慎重に体制を再構築する動きが出てくるかもしれません。
リスク管理、トレジャリー、ALM(資産負債管理)分野では、金利上昇は純金利マージンを改善する一方、デュレーションリスクや時価評価リスクを高めます。特に地域金融機関においては、市場リスク管理やトレジャリー、ALM関連の採用強化が進む可能性があります。これらの職種はフロントオフィス採用ほど目立ちませんが、金利環境が変化する中で極めて重要な機能です。
アセットマネジメント分野では、防衛、半導体、サプライチェーン強靭化といったテーマに関するリサーチ体制が拡充される可能性があります。また、地政学的変化を見据えたマクロストラテジストやアクティブ運用担当者の重要性も高まるでしょう。同時に、安全保障重視の規制環境の強化は、金融犯罪コンプライアンス、制裁モニタリング、サイバーセキュリティ関連職種の構造的な成長を後押しします。
したがって、日本の採用見通しは広範な人員拡大というよりも、ターゲットを絞った採用に重心が置かれています。政策がより介入的となり、市場がよりダイナミックになるにつれ、金融機関は単純な人員増よりも専門性を優先する傾向を強めるでしょう。その結果、安定性重視の人員配置からスキルベースの差別化へと徐々に移行し、セクターとの整合性やリスク専門性が競争優位の源泉となっていくと考えられます。

